【愛を乞うひと】毒親からの解放と自立の物語
こんにちは。
くまりんごです。
本日は映画のご紹介です。
タイトルは「愛を乞うひと」。
下田治美さんの原作による映画を、かれこれ20年ぶりぐらいに見ました。
主演は、原田美枝子さん。
母に愛されず、傷ついた少女時代をすごした娘・照恵と、その母・豊子の二役を見事に演じ分けています。
父親役に中井貴一さん、その友人役に小日向文世さんなどが出演され、なかなかの顔ぶれです。
以下、内容のネタバレがありますので、「あ、これから見ようと思ってたのに~」という方はご注意くださいませ。
夫が他界したのち、仕事をしながら娘との静かな二人暮らしを楽しんでいる主人公・照恵。
彼女は台湾人の父・陳文雄と日本人の母・豊子との長女であり、幼少の頃から母に日常的に暴力を振るわれて育ちました(つまり虐待です)。
日増しにエスカレートする娘への暴力に耐えかね、優しかった父はある日、照恵を連れて豊子のもとを去ります。
大雨の降りしきる中、豊子は追いかけて泣き叫び、夫に暴言を吐きます。
わめきながらも彼女は実は、捨てないでくれと言っていたのでした。
しかし父は照恵の手を握りしめながら歩き、決して、豊子を振り返ることはありませんでした。
肺を病んだ父はその後亡くなり、照恵は養護施設に預けられますが数年後、なんと母・豊子が引き取りにくるのです。
そこから照恵の生活は一変します。
父親違いの弟の存在、そしてたびたび変わる「父親」との同居。
幼い照恵には混乱する日々です。
そしていつ、何で怒り出すかわからない母の、数年にもわたる執拗な虐待。
それが日常化しているので、最初は諫めていた義父もやがて「顔はだめですよー。女の子なんだから」と、豊子の虐待を容認するようになってゆきます。
このへんが、やたらリアルです。
似たようなご経験をされた方には、正視できないかもしれません。
ある日、中学の入学祝いの制服を義父からもらい、はにかむ照恵。
そんな嬉しさもつかの間、もらった制服を、義父の前で着替えろと母が命じます。
いきなりの無茶な命令に、照恵も義父もうつむき、困ってしまいます。
母は、そんな照恵の態度が癇に障り、物差しで照恵を打ちすえます。
額が割れ、血を流す照恵。
そのときに、今まで言えなかった一言が照恵の口から漏れ出すのです。
「お母さん、なんで私を引き取ったの?わたしが可愛いから引き取ったんだよね・・・?そうでしょう?」と。
しかし、その後の母の言葉は、想像を絶するものでした。
そこは原作をお読みください。
死後数十年たった、亡くなった父のお骨を探している照恵には、深草(みぐさ)という高校生の娘がいます。
この子がまた、素敵なのです。
母のことを理解し、サポートしてくれる「相棒」といっても良い存在です。
父から受けた愛ゆえに、深草をともなって自分のルーツである台湾へゆく照恵。
愛してくれた父の面影を胸に、彼女はいつしか、心の中の母に出会う旅をしていました。
照恵は、ついに、かつて壮絶な別れ方をした母に、会いにゆきます・・・。
港町で細々と美容室を営んでいる母。
照恵は、店に立ち寄り前髪だけを切ってもらいます。
豊子は、見知らぬお客ががまさか、自分を訪ねてきた実の娘であるとは気づいていません。
しかし照恵の額の傷に手が触れた瞬間、ハッとし、鏡の中の娘をまじまじとみつめます。
大人になった照恵は、若かった豊子そっくりの美しい、そして母にはないとても柔和な顔立ちをしていました。
「本当は、わたし、子どものころに美容師になりたかったんです。母に、髪をとくのがうまいって、そこだけほめてもらったのがすごくうれしかったんです・・・」と、ふと語りだす照恵。
母は、何も言わず前髪を切りつづけます。
カットが終わり、レジで事務的に「2000円です」とだけ言う母に、照恵は「どうぞ、お元気で・・・」深々と頭をさげます。
娘であることは、一言も告げずに。
豊子は照恵のあとを追うようにして店の外へと出てくると、ひとり呆然と、娘の姿を見送りました。
母との対面を果たした照恵には、娘の深草が待っていてくれました。
母に髪を切ってもらう、この行為こそが照恵にとっての「縁切り」だったのでしょう。
「本当にひどい母親だったけど、それでも母に可愛いねって言ってもらいたかった、叩かれたって、それでも好きだった・・・。」
帰りのバスで、照恵は娘の肩に頭をもたせかけて泣きます。
子どもというものは、たとえいくつになっても、母からの愛を欲してやまないものなのだなと思います。
「母は、わたしを愛してはいなかった。だからもう、それをあきらめていいんだよね。」ということを、ようやくさとった照恵。
思い返せば彼女には、愛してくれた父や、親代わりの父の友人夫婦、夫、そして娘の存在がありました。
彼らは、無償の愛を照恵に注いでくれていたのです。
「母にはそれを望めなかったけれど、実は自分はちゃんと、愛されていたのだ」ということに気づけたことで、照恵の「心の旅」は終わります。
愛されたい、だって自分は愛されていないから、と思っても。
自分がここにこうしていることは、ちゃんと愛されていたということ。
欲して求めている間は見えないけれど、「それ」はちゃんと、自分の中にあったんだということを教えてくれる物語です。
20年ぶりぐらいに、改めてこの映画を見たのですが、初めて見た時とは今の心持ちがずいぶん変わっていることに気づきました。
タイトルの「愛を乞うひと」。
これは照枝でなく、愛を求めても得られなかった母、豊子のことだと思いました。
息子ではなく、娘だけを虐待していた母は、真に自分を愛することができない人だったのでしょう。
娘と母を演じた原田美枝子さんが素晴しかったです。
やがて、成長した娘の給料までも搾取するようになった母から、照恵は弟の助けもあってある日、逃走します。
自分の幸せのためには、不幸な状況から勇気をもって逃げ出すこと。
それができたから、照恵は幸せになれたのだと思います。
母に虐待された過去がありながらも、自分を律して娘の深草には手を挙げなかった照恵。
彼女は、気づけば「愛を与えるひと」になっていました。
幸せになれる人とは、傷つきながらも自分を愛し、いつしか自分を守る強さを身に着けることのできた人だと思います。
「愛を乞うひと」、気になる方はまずは、小説からお読みになることをおすすめします。
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